蓮が言う。あれから、蓮は私のために色々と尽くしてくれた。

「ほら? よく小さい頃、お互いの家族と行ったレストランがあったろ? そこで日本での最後の晩餐をしよう」

蓮も私と同じく、ワルシャワの大学へ行く。

しばらくは同じアパートで暮らし、一緒に勉強するつもりだ。

「そうだね。行こう…」

そう言いつつ、目線を蓮から反らした。

「琴葉」

蓮は軽く私のほほに触れる。

「今でも君は、僕の彼女かい?」

蓮は真っ直ぐな目をしていた。蓮が私のことをどう思っているのかは分かっている。

それに蓮がお兄ちゃんのような偽りの感情ではなく、本物の愛情を持っているのも分かっていた。

けど、それを受け入れられない自分もいた。

「まだ、別れてないからね」