そしてルナは、私のもとを去った。

「今までどちらにいらしたんですか!?」

「田舎にある医院で静養を取っておりました」

大勢のカメラマンと記者。フラッシュ。

まるで不倫した芸能人のように、私は取材陣に囲まれ、記者会見を開いた。

「なぜ、誰にも言わずに?」

「それが治療に必要だったからです。世間を離れて、治療に専念したかった。そうでもしないと、あなた方は私を自由にしてくれないので…」

「心配をかけたみなさんへは?」

「申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「治療の成果は?」

私は席を立つ。

「それをこれから、お見せします…」

その日、私のピアノは全国中継された。

世間はそれで、誘拐はメディアの勘違いであり、私は本当に治療に専念していたのだとみなした。

私が彼らと過ごした1ヶ月は、嘘のように消えてしまったのだ。