お兄ちゃんは私を見ると、涙ぐみながら駆け寄ってきた。

お兄ちゃんは私を抱き締める。手つきが気持ち悪くて、吐き気がする。

「琴葉…」
「蓮?」

お兄ちゃんのすぐ後ろには蓮がいた。

「戻ってくるって信じてたぞ! やっぱり琴葉にはお兄ちゃんが必要だな!」

お兄ちゃんがにこりと笑う。

「これからはずっっっと一緒だぞ! 琴葉は必ず、お兄ちゃんが幸せにするからな!」

お兄ちゃんの言葉に自然と笑みがこぼれた。

むしろ、必死で笑いをこらえる。

なんて薄っぺらな言葉なんだろう。

私はこんなものを守りたくて、こんなものでもいいから愛情を信じたくて、この人をかばっていたのだろうか。

「心配してくれてありがとう。お兄ちゃん…」

私が言う。ここに連れられてくるまでに、覚悟はできていた。