「共感覚のないあなたには、死の旋律の苦しさは分からない」と私。

「そうさ。だが琴葉、お前の人生は俺が決める。子供のお前には、何もできないだろ?」

「あなたはただ、私のピアノでお金を稼ぎたいだけでしょ?」

お兄ちゃんとは五年前、両親の死をきっかけに再会した。

ずっと海外の大学で音楽を勉強していたお兄ちゃんは、私の記憶の中では、明るくて、とっても優しい存在だった。

大学を辞めてまで、私のために日本に戻ってきたと知ったときは、本当にうれしかった。

あのときは悲しみで心がボロボロで、毎日、死ぬことばかり考えていた。

『俺が来たから、もう安心だぞ。これからは二人で暮らそうな』

そう笑うお兄ちゃんが、どれだけ頼もしかったことだろう。

しかし、すぐにお兄ちゃんは私を裏切った。