「そんなの、無理だよ…」

私は浴衣の襟を握り、顔を背けた。

バカげている。そんな無謀な挑戦。

そう思いつつ、どこかで高揚している自分もいる。

もしかして、挑戦したいの?

子供の時からの夢を叶えるために?

世界一のピアニストになるために?

けどそうしたら、私はペコを…

「どうだい? 少しは自分から家へ帰る気にはなったかい?」

蓮はまるで、私の葛藤を見透かしているようだった。

幼なじみだからか、蓮はよく私の心を読んでしまう。

「おっ!! 琴葉達いんじゃん!!」

「おーいっ! 琴葉ちゃーん!」