神社はたくさんの人でにぎわっていた。

真っ赤な桃燈が照らす境内には、たくさんの屋台が並ぶ。

色とりどりの浴衣を着て歩く人々と、その笑い声。

お店の近くを通れば、綿菓子の甘い匂いや、油と鉄板で焼いた粉ものの香ばしい匂いがする。

ここはまるで、異世界だ。

端から見ればカップルの慧さんとは、ほとんど会話もなく歩いている。

護衛に徹してるのだろうけど、それにしたって慧さんは気まずいことがあるみたいにしゃべらなかった。

石段を上ると、神社の本殿がある。

蓮はそこで、淡い緑色の浴衣を着て、リンゴ飴をなめていた。

「やぁ、待ってたよ琴葉。その浴衣すごく似合ってるよ」

蓮は私に気づいて微笑んだ。