夜になって、私はペコに来た呉服店のおばあさんに浴衣を着付けしてもらった。

この呉服店はAXISの縄張りにあって、ルナに助けられたことがあるらしく、浴衣は無料で借りることができた。

白地に淡い桃色の牡丹。帯は朱く、腰がぎゅっと締まり、背筋が伸びる。

おかっぱから少し伸びた髪には、白い花の髪飾りをつけた。

「どうかな?」

みんなにお披露目すると、一斉に顔を真っ赤にした。

「今日は会議中止。俺は琴葉とお祭りに行く」

ルナはそう言って私の手を握った。

「ダメです。せめて会議が終わってからみんなで行きましょう」

「くそ…」

将冴さんは「超かーいーっ!」とスマホで私の写真を撮る。

篤史さんは「ダメだ! 俺には陽葵が…」と何度も呟いた。

「おい。なんで俺まで?」

奥から浴衣を着た慧さんが出てきた。

縞模様で藍色の浴衣だ。帯は黄土色で、不機嫌そうな顔だけど、すごく似合っていた。

「いつも難しい顔をしているので。慧もたまには遊んでらっしゃい」と麗於さん。

「ったく、目的は護衛だろ」