思わずにんまりとした笑みがこぼれる。

「やっぱり慧さんもピアノ大好きじゃないですか! やっぱりやっぱり!」

興奮して顔を近づけると、慧さんはおでこに「うざったい」とデコピンした。

「親には猛反対されてるがな」

「お父さん、お医者さんなんでしょ?」

「ま、どうにかして説得するさ」

慧さんはもう一度コーヒーを飲む。

「でもどうして、音大に行くって決めたんですか?」

慧さんは横目で私を見る。メガネ越しの目元がキレイで、思わずドキッとする。

「お前のせいだぞ」

「え?」