ペコの仕事をしながら、麗於さんに花火大会のことを言い出せずにいた。

すると、お昼頃に慧さんがやってきた。

慧さんは端の方のテーブルで、ノートや本を広げ出した。

受験勉強かな? 前に医学部に行くって言ってたし。

「おい、コーヒー」と慧さん。

相変わらず高圧的で、淡々とした口調だ。

「はーい」

私はコーヒーを持っていく。机に広げられた本を見る。

それは大学のパンフレットだった。

だけどよく見ると、それは医学部ではなく、音大の、しかも海外のものだった。

「これって? 慧さんが行くの?」

思わずパンフレットを手に取る。

慧さんは顔を赤くし、それを誤魔化すようにコーヒーを飲む。

「だ、だったらなんだ?」