「ううん。卒業おめでとう」

寂しさをこらえる。颯太君は私の手を握る。

「琴葉ちゃんが、僕に勇気をくれたおかげだよ。本当にありがとう」

止めてよ、泣きそうになるじゃん。

「頑張ったのは颯太君だよ。いつも一生懸命だったし」

「ありがとう。でも、これからだよ」

「え?」

「学校へは、通うことが目的じゃない。僕はそこでたくさん勉強して、新しい夢を見つけたいんだ。たとえ字が読めなくても」

学校へ出かける颯太君は、夕方には戻ってくるはずなのに、どこか遠くへ行ってしまうような気がした。

いつもより、目が大人びて見えた。

出会ったときから、颯太君も少しずつ変わっていた。