「私もよく分かりません。ただ、大切な家族との思い出が、死の旋律となってしまうことが嫌だったんです。そうして願っていたら、あの曲になりました」

麗於さんは私の頭をなでる。

「過去を受け入れたのですよ。そして家族の死の悲しみを、感謝という感情へ再構築した。素晴らしい成長です」

もし、それが本当なら、ルナのおかげだ。

ルナの『琴葉は何も悪くない』と言う言葉が、私を死の旋律から救ってくれたのだと思う。

「また、弾いてくれますか?」

麗於さんの言葉に「はい」と言いかけて、言葉を飲んだ。

なぜだろう? 私は恐れていた。

ピアノを弾けば、みんなと離れ離れになってしまう。

二度と、ルナと会えなくなってしまう。

そんな予感がした。

「今は、気が向かないので」

そう言ったと同時に、颯太君が下へ降りてきた。

「どうしたの? その格好!?」