「あれ?」

なぜか、自分は泣いていた。

安心したのだろうか?

ピアノがまた弾けて、感極まっているのだろうか?

いや、違う。

なんだろう? この寂しさは?

どうしようもなく込み上げ、私を飲み込んでいく。

ただひとつ分かるのは、止まっていた私の時計が、確実に動き出したことだった。

「僕も、もう一度聴きたいな」

後ろで聴いていた男が、帽子をとる。

その顔を見て、私は思わず声がもれる。

「蓮…」

1ヶ月ぶりの再会だった。