最後の一音を奏でると、お客さんはシンと静まりかえった。

汗が額を流れた。顔が熱く、火照っている。

将冴さんが立ち上がると、私の名前を叫びながら拍手する。

それにつられ、お客さん達は立ち上がり、それは店が揺れるほど、大きな拍手となった。

息が上がっていた。どっと疲れ、指も痛い。

いつまでも続く拍手。興奮するような、泣いているような、みんなの表情がうれしかった。

ルナはお客さんの中で、唯一座ったままだった。

拍手をするルナは、安心したように笑っていた。

やっと弾けたんだ。満足感に満ちていく。

それにこの曲は、多分、天音を越えている。

「アンコール! アンコール!」

誰かが言い出した。この求められている感じは、久しぶりだった。

ピアノの鍵盤に指を置く。そのとき、手の甲に水が落ちた。