夜になった。慧さん目当てで、たくさんのお客さんが集まる。
「ありがとうございました」
慧さんがお辞儀をする。割れんばかりの拍手。
今日の慧さんは過去一で絶好調だった。
「続いては、月子さんです」
麗於さんがアナウンスする。その途端、観客の一部からがっかりするような声が上がる。
「またあの子? 前に気絶した」
「嫌ね。慧様に弾いてもらいたいのに」
「天音が聴きたいわね。天才が作った曲を慧様が弾くからいいのよ。なのにあの子じゃ笑」
最前列のおばさんが嫌みをいう。
落ち着け。今はピアノにだけ集中しよう。
ピアノに向かう私は、慧さんとすれ違う。
「なぜまたピアノを?」
「自分でも、分かりません…」
はっきりとした理由は説明できなかった。
それどころか死の旋律を、乗り越えられる自信もない。
「だけど今は、ただ弾きたいんです。そしてもう逃げたくない。それだけです」
「ありがとうございました」
慧さんがお辞儀をする。割れんばかりの拍手。
今日の慧さんは過去一で絶好調だった。
「続いては、月子さんです」
麗於さんがアナウンスする。その途端、観客の一部からがっかりするような声が上がる。
「またあの子? 前に気絶した」
「嫌ね。慧様に弾いてもらいたいのに」
「天音が聴きたいわね。天才が作った曲を慧様が弾くからいいのよ。なのにあの子じゃ笑」
最前列のおばさんが嫌みをいう。
落ち着け。今はピアノにだけ集中しよう。
ピアノに向かう私は、慧さんとすれ違う。
「なぜまたピアノを?」
「自分でも、分かりません…」
はっきりとした理由は説明できなかった。
それどころか死の旋律を、乗り越えられる自信もない。
「だけど今は、ただ弾きたいんです。そしてもう逃げたくない。それだけです」



