思わずそんな言葉が出た。

ずっと不思議に思っていた。ルナほどの男が、なぜ私みたいな子供を助けようとするのか、理解できなかったから。

ルナは立ち上がり、ピアノの辺りまで歩く。

その顔は、何か大切なことを打ち明ける決心を固めているようだった。

「七年前、ここで俺は、ある不思議な女の子と出会った」

ルナの言葉に、思わず息が止まる。

それって、夢の……?

「どこから来たかも分からない。そいつはひどく疲れていて、死ぬ前に、ここでピアノを弾きたかったらしい」

頭に夢の中の光景が広がる。

ルナはピアノの側板を指でなぞる。私は静かに歩き、ルナの後ろに立つ。

「聞いたこともない曲だった。だが不思議と、懐かしい気持ちでいっぱいになった。大切な人を失い、ずっとピースが失われていた胸の隙間に、その音は、新しい温かさをくれたんだ」