「お前の嫌いなとこ、教えてやるよ。そうやってうじうじ悩んで、結局、何も解決できねぇところだ」

篤史さんは脱いでいた特攻服を羽織り、ハンカチをポケットに入れた。

「ハンカチも返せない篤史さんに言われたくありません!」

篤史さんは予想外の攻撃に「うぐっ!」と胸に手を当てた。

「お前、口喧嘩強くなった? お嬢様キャラ薄まってね?」

そのままどこかへ出かけようとする。

「どこに?」

「その辺見てくる。あいつ多分、三日間寝ずに戦ってるだろうからな。もう限界だろ」

篤史さんは「お前は待ってろ。外さみぃし」と付け加えた。

「ありがとう。篤史さんも気をつけて」

篤史さんはほんの少し笑った気がした。

「経験則だが、もう一個教えてやるよ」

篤史さんが言う。

「誰かに裏切られた過去を悔やむくらいなら、信じた自分を誇りに思いな」

それは、篤史さんが孤児院時代を思い出しているかのようだった。

「俺も、そうやってなんとか生きてる」