『おデート申し込み』

 ふうん、たすく君って案外働き者じゃない。

 メイプルシロップのような蕩ける甘さの笑顔で接客するたすく君をカウンターのから眺めて感心、感心。

 私の見たところじゃ、あの「お金に困ってるんです」ってあれ、嘘ね。

 三つ子の魂100までっていうの?
 コーヒーを客に出すときのちょっとした仕種や、立ち振る舞いの節々、敬語の使い方に育ちの良さを垣間見る。

 なんでこの子、あんな嘘ついたのかしら。やっぱり気になるわ。

 さて、嘘に騙されてあげた見返りは、何をくれるんでしょうかね。

 まあ、私に見破られるようじゃ、たいしたことないかもしれないけれど。
 もっと私みたいに極めないと駄目よ、なんてね。

「燈子さぁん、ローズヒップって何処にありますう?」

 こうやって嘘くさい笑顔を振り撒きながら、私に取り入ろうとしてくるあたりが何ともかわいいのよね。

「ローズヒップは、ここよ。
たすく君、物覚えが良くって、助かっちゃう」

 ホント、この子、記憶力が凄まじくて……なかなか使えるわ。

 響ちゃんとたすく君、くっついてくれないかしら。かなり楽になるのに。

 それにしても、検診から帰って来たら響ちゃんのたすくくん、妙な雰囲気だったのよねえ。どういうことなのかしら。