「こんな美人な姉ちゃん捕まえて、ババアはねぇだろうが!!ぶっ●すぞ、てめー!!」

 このおっそろしいお方は、薫の姉(顔がそっくり)で、小学生の頃からここいらの悪ガキをシメてきた、鬼の晶サン。
 この居酒屋のママ(なんかしっくりこないな、ママ。)である。

「晶さぁん、たすくのやつ、ぶん殴ってくださいよぉ。あいつ、どうしようもないんすよぉぉ」

 言葉の合間合間にしゃっくりを挟みながら、訴える琴実は――
「ぐぅ」
寝やがったぜ、畜生。

「ははは。琴実、随分荒れてたな。
琴実、たっしーと喧嘩したのか?
ほら、かおちゃん、ヒデのジョッキが空だぞ」

「へいへい。ったく、人使いが荒いババアだぜ」

 カウンターに突っ伏して完全に寝入った琴実の頭を優しく撫でる晶さん。この人は、昔っからかわらないなぁ。

「そうなんすよ。っつっても、まあ、一方的に琴実がやられまして」

「なんだあ、意外だな。たっしー随分、けんがとれた顔してたと思ったんだけどな」

 この前、来たんだよと晶さん。その顔は、嬉しそうに綻んでいた。

「確かに、たすくは、帰って来てから随分と変わりましたよ。
一皮剥けたっつうか、なんつうか。
でも、琴実には、やっぱり厳しくて」

 俺が言うと、晶サンは押し黙って、琴実を見つめながら、ただ、頭を撫でていた。