「燈子さあん、燈子さあん、聞こえてますかあ?」

 甘えるような声に我に返れば、小首をかしげるたすく君のどアップ。
 あら、嫌だわ。思い出してたら、呼ばれたの気付かなかった。

「どうしたの? たすく君、何かわからないことでもあった?」

「ううん。違います。ちょっとね、燈子さんにお願いがあって……」

 微かに揺れるまん丸の瞳。
 その辺の女なんかは、この顔にイチコロよね。
 特にオバサンなんかは。

「なあに?」

「俺ね、キョンと、デートしたいの。明日あたり、だめ?」

 ふうん。私にくるか。
 よくわかってるじゃないの、この子。

 そうね、響ちゃんに言ったって無駄だものね。
 でも一応。

「どうして私に言うの? 響ちゃんは何て?」

 俯いて首を横に振るたすく君。
 
 なるほど。「なかなか言い出しにくくて……」って演出かしら。

 まあ、いいわ。たすく君と響ちゃんがくっついて欲しいしね。

「ふふ。私にまっかせなさい!! じゃあ、明日11時に駅前の噴水に待ち合わせね」

 たすく君は「ありがとお!!」って抱きついてくる。その仕草は、無邪気な子供そのもの。
 まあ、うまくおやりなさいな。
      
         了