呪イノ少女、鬼ノ少女

「それでようやく自分が失敗したんだって気付いた」


茜は頭の天辺の髪を掻き毟り、掴んで、引っ張る。

ぶちりぶちりと千切た髪が雛子の布団の上に散らばった。


「あの頃の雛子は見るに耐えなかった…。そこからは、大和、あんたも知ってるでしょ」

「ええ。茜さんに、俺に、果ては九音さんにまで依存を。で、そんなこいつが鬱陶しかったんでしょうね。九音さんのキレ方は……思い出したくもない」

「あの子も性格にはとびっきり問題アリだから」


それには澪も苦笑気味に、しかししっかりと頷いておいた。

昨日奪われてしまった唇の衝撃は忘れていない。


「九音ちゃんみたいにストレートなのはラクよねぇ。でも、私は母親だからそんな風に感情をそのままって訳にはいかなくて。どうしたらいいのかな。甘えを許さなければいいの?躓いたら自力で立ち上がらせればいいの?」


手痛い失策に、茜はすっかり道を見失ってしまっていた。

雛子が転んだら、手を差し伸べるのではなく、自分で立ち上がってみなさいと言って背後で見守る。

親というものを知らない茜には、それすらも思い浮かばなかった。

いや、もはや、茜はそれまでの日常を繰り返す事すら出来なくなってしまっていた。


「私のせいでまた失敗させちゃうのが怖かった。母親の私の失敗で娘を台無しになんて…考えるだけでも怖い。考えてたはずなのよ。この子の重みを、未来を、幸福を。なのに、私は今まで積み重ねて来たこと全部が怖くなった。重ねて来たのが失敗だったんだって気付いた。だから…だから放任なんて言葉で包んで、ただ傍観を決め込んだ。逃げたのよ」

「茜さん……」

「その癖に母親だなんて馬鹿の一つ覚えに言い張って立場を守ろうとしたりさ。図星を突かれて澪ちゃんに怒って……私ってば子供ね」


ほうっという吐息が、茜の形のいい唇から溢れた。

それから、その場の全員が口を閉ざしてしまう。

いつのまにか雨の音も聞こえなくなっており、重く押しつぶすような沈黙が場に降りるのだった。