「あやちゃん! こんな時間にどこに行くの!」
「……どこでもいいじゃん」
夜22時、私は無駄にデカい屋敷を出る……出る前はあんな心配している“フリ”しても追いかけてこないんだから。
私の名前は雲龍綾奈(うんりゅう あやな)。
はぁー……夜風が吹いていてとても気持ちいい。
数分歩けば、キラキラと輝く繁華街がある。酔っ払いやホストやキャバ嬢がたくさんいる中繁華街を通り、いつもの公園へと向かった。
灯りもない、誰もいない公園のベンチに座りボーッとする。私は……この静寂の空気がたまらなく好きだ。
(帰りたくないなぁ……)
ベンチから立ち上がり、月の明かりを受けながら家へ戻った。
家に帰ると「……綾奈様?」と玄関先でバッタリ会ってしまった。
「ケンちゃん」
ケンちゃんこと、森岡賢太(もりおか けんた)。この人は、幼い頃面倒を見てくれたお兄ちゃんみたいな存在だ。
「綾奈様、組長がご心配をされていらっしゃいました。どちらに?」
「……うそばっかり」
組長……お父さんが私を心配するだなんて。そんなことあるはずないじゃない。