箱崎桃にはヒミツがある

 (ひげ)の店主に注文したあとで、これまたレトロな感じの分厚いグラスに口をつけ、来島は言った。

「まあ、レトロカフェでテンション上がるのもいいけど。
 撮影でも、もっと上げてってよ。

 CMは上手くいったけど、あんたほんとにスタジオでの撮影苦手ね」

 ほんとにモデル? と言われてしまう。

「はあ、緊張しちゃって……」

「あんたって、何カ国語しゃべれるんだっけ?」

 英語しゃべれるんだっけ? じゃなくて、突然複数ですか、と苦笑いしながら、桃は言った。

「えーと……日常会話に支障がないのは、三ヶ国語くらいですかね」

 あとはせいぜい挨拶程度だ。

「せっかく勢いに乗ってるんだから、海外進出も視野に入れましょうよ。
 って、社長も言ってるわよ。

 ……ちょっと~?
 露骨に嫌な顔しないでよね~」
と睨まれる。

 此処でまた、近場で羽ばたきたいとか言ったら、来島さんにも、ハトかっ、て言われるんだろうな~、と思い、桃は黙った。