箱崎桃にはヒミツがある

 


 同じ頃、桃は仕事に出たついでにお昼を食べて帰ろうと、来島に誘われ、美味しいカフェが入っているという雑居ビルに来ていた。

「なにやってんのよ、あんた。
 さっさと入りなさいよ」
と後ろから来島にどやされる。

 桃が手を突き出したまま、店のガラス扉の前に突っ立っていたからだ。

 扉にあった注意書きを見て、あ~、と桃は声を上げた。

「あ、手動って。
 手で開けろってことか。

 あ~、手をかざしたら自動で開くって意味かと思ってました」

 ははは、と笑うと来島に冷ややかに見られ、

「……一旦、ステージを下りたら、すっとぼけてるこの娘の何処がみつぐんはいいのかしらね?」
と言われる。

 いや、みつぐん様は、他の見合いをしたくないから、私と見合いしたいただけで、別に私のことは好きとかではないようですよ、と思いながら、むなしく手動のガラス扉を手で開ける。