箱崎桃にはヒミツがある

 うっかり、こいつと恋人同士になんてなろうものなら、他のことが全然考えられなくなったりしないだろうかと不安になっていたのだが。

 それ以前に、『そうでさ』と『けこむ』で頭がいっぱいになって、なにも考えられなくなりそうだ。

「ちょっと頭冷やして……

 いや、お手洗いに行ってくる」
と貢は席を立つ。

 戻ってきたとき、桃はなにかを注文していたところだったらしく、若いウェイターがちょっと恥ずかしそうに桃と話していた。

 ……どうして、お前の外見は美女なんだ。

 お前の価値は、そこにはないのに。

 なんだかわからないことをコツコツやってるとことか。

 地味に真面目そうにやってるように見えて、頭のネジが飛んでるとことか。

 そういうところがお前のいいところで、可愛いところだろうが、と思いながら、貢は席に戻る。

「先生、もう一杯呑まれます?」
と桃が自分を見上げ、訊いてきた。