結局、放送時間を訊けないまま迎えた木曜日、貢は昼に街中を歩いていて足を止めた。
近くを歩いていた女性グループも立ち止まり、大型ビジョンを見上げている。
五面ある大型ビジョンすべてに桃がいた。
普段の桃ではない。
ステージ上と同じ桃がいた。
雰囲気のあるゆったりとした曲。
薄い桃色の布が透ける花弁のように幾重にも重ねられたドレスに、濃い赤紫の口紅。
桃がただ立ってるだけで、その花弁のようなドレスが散っていき、濃い赤紫のタイトなドレスに変わる。
美しい桃の脚は同色のヒールを履いている。
なんのCMかと思ったら靴のCMだった。
「このCM、初めて見たー」
「脚きれー」
「知ってるよ、この人、箱崎桃。
前見たことあるよ、ショーで」
みんなが桃を見上げている。
不覚にも、すべての大型ビジョンを叩き割って逃げようかと思ってしまった……。



