箱崎桃にはヒミツがある

 桃は俯きがちになっていた顔を上げ、貢に言った。

「じゃ、じゃあ、どうしても、先生と結婚しなければならないのなら」

 ならないのなら? と貢がこちらを見る。

「……私を恋に落としてください」

 桃としては精一杯の告白だった。

 だが、貢は、あっさり、

「いや、無理だ」
と言ってくる。

「見てわからないのか。
 俺はものすごい朴念仁(ぼくねんじん)だ。

 無理に決まってる」
と主張する。

 そ、そうですか……と苦笑いする桃の手を取り、貢は言った。

「だが、お前のために頑張ろう、箱崎桃。
 いや、こういった分野には(うと)いので、なにをどうしたらいいのかわからないんだが」
と貢は恋を研究の一種でもあるかのように語ってくる。

「……大丈夫です。
 私も疎いんで」
とまつげパーマにより、目力(めぢから)の増した貢の視線から逃げるように目をそらしながら、桃は言った。