箱崎桃にはヒミツがある

「なんでなのか、自分でもわからないんだが。

 でも、俺はこれきりお前と会えなくなるのは嫌だと思ったし。

 できるなら、お前と結婚したいと思った」

 いや……と貢は言い換える。

「できるならじゃないな。

 俺は――

 どうしてもお前と結婚したい、箱崎桃」

 二週間前、歯医者の診療台の上で思っていた。

 人生でこんなにドキドキすることはないと。

 だが、今、それよりも鼓動が激しくなっているっ。

 今、先生はドリルもなんだかわからない光る(とが)ったものも持ってないし、此処は診療台の上でもないのにっ。

「ど、どうしてもですか……」
と動転しながら、桃は貢の言葉を鸚鵡(おうむ)返しに繰り返してしまう。

 だが、貢は、

「どうしてもだ」
と力強く返してきた。