桃は貢のあとをちょっと困ったようについて歩いていた。
これはあれですかね? 先生。
前言ってらした、付き合っているフリをする、という奴ですかね?
すると、貢はあの橋の上で足を止めた。
赤い手すりに手をかけ、池を泳ぐ立派な鯉の群れを見ているようなので、桃も眺めた。
此処の鯉は優雅だな。
うちの実家のとか、近づいたら、餌もらえると思って、集団ですごい顔でビチビチ言ってくるんで怖いんだが……と思ったとき、貢が口を開いた。
「昨日の朝、明日で最後か、と思ったんだ。
たっぷりと けこむなスープの箱を見ながら」
そ、その話は忘れてください……。
「お前と出会ってから俺は不思議なことばかりする。
ただ道を歩いているだけで、お前の姿を探してみたり。
お前の行きそうな書店に行ってみたり。
CMのために録画したのも初めてだ。
俺は今まで、どんな女にも心を動かされなかったし。
付き合いたいとか、自分のものにして、誰にも見せたくないとか思ったこともない。
何故、お前にだけ、そんな感情を抱くのか。
お前にどんな秘密があるのか知りたいと思った」



