箱崎桃にはヒミツがある

 オフィスビルにも、日本庭園にもまだ灯りがついていて、綺麗だった。

 仲良さげなカップルが向こうから微笑み合いながら歩いてくる。

 それを見た貢がいきなり、

「……駄目だ。
 このまま、此処にお前とこうしていると、告白してしまうっ」
と言い出した。

 告白?

 酔った桃の頭の中では、貢はトレンチコートを着て、断崖絶壁を背に立ち、おのれの罪を告白したあと、海に飛び込もうとしていた。

 思わず、
「駄目ですよ、先生、危ないですっ」
と叫んでしまう。

「そうか、駄目か」

「はいっ、駄目ですっ」

「……そうだな。
 お前は、これから、その辺で羽ばたくんだろうからな」

 そう寂しげに貢は言った。

「いやまあ、その辺でも羽ばたけそうにないんですけど……」

 ハト以下かな、私……と思いながら、そのまま住んでいるレジデンスまで送られた。