箱崎桃にはヒミツがある

 ちょっと冒険、と思って、貢と同じものを頼んでみたのだ。

 細いグラスの中で次々上がってくるビールの泡を見ながら、桃は呟く。

「たまには定番メニューから外れて冒険してみるかって思うんですが。
 大抵、失敗に終わるのに、何故、人は時折、冒険してみたくなるのでしょうね。

 原始、新しい土地を次々開拓していたころの名残りでしょうか」

「……ご大層なことを言ってるが。
 要するに、ハズレだったんだな、そのビール」

 桃は、こくりと頷いた。

「じゃ、違うの頼め」

 えっ、でも、と桃はまだ三分の二は残っているグラスを見て言ったが、貢は、

「いい。
 俺が呑む」
と言う。

 そして、言ったあとで、なにかに気づいたように、

「……呑んでよければ」
と付け足してきた。

「あっ、ありがとうございます。
 でも、申し訳ないですっ」

 いやいや、まあまあ、と揉めながら、結局、桃はグラスごと貢に渡し、いつも呑んでるようなワインを注文した。