箱崎桃にはヒミツがある





「……お前の見合いはお色直しがあるのか」

 桃が買った大量の服の紙袋を持って歩きながら、貢が言ってくる。

「す、すみません……」
と桃は赤くなって俯く。

 結局、いつもの店にも覗き、あれもこれもと薦められ、ついつい、全部買ってしまったのだ。

「なんか服との出会いも一期一会だなあと思って。
 今、あるうちに、って思っちゃうんですよね~」

 以前買いそびれた服が、今でも頭に残っていたりするからだ。

「お前の部屋のクローゼットはどうなってるんだ」
と呟かれ、つい、

「見てみます?」
と言ってしまう。

 貢が沈黙した。

 あ、なんか家に誘ったみたいになっちゃったな。

 そんなことを思いながら、明るい夜の街を歩いていると、いい匂いがしてきた。

 焼肉屋さんの前だった。

 ふたりとも同時にそちらを振り返る。

 歩き疲れてお腹が空いていたからだ。