玲子と梓の間にはしっとりとした空気が流れている。


そんな中、厚彦は梓の額とピンッとデコピンしはじめた。


「おい、無視するなよ! 俺はまだ成仏してねぇ!」


耳元で騒ぐものだから思わず「うるさいな!」と、怒鳴ってしまった。


怒鳴られた厚彦は驚いた表情で梓から身を離す。


けれど、突然怒鳴ったことに驚いたのは玲子の方だった。


「ご、ごめん。そんなにうるさかった?」


申し訳なさそうに言う玲子に、梓は慌てて左右に首を振った。


「ち、違うの。玲子は全然うるさくなくて、厚彦が……」


「厚彦? 厚彦って手代くんのこと?」


「あ、えーっと」


なんと言い訳をしていいかわからなくて、混乱し始める梓。


厚彦はそんな梓を見てお腹を抱えて笑っていたのだった。