すっかり困ってしまった時、厚彦が声をかけてきた。


「梓、手を出して」


「え?」


「早く」


そう言われて、梓はなにもわからないままドアへ向けて手を伸ばした。


すると、ドアの向こう側からニュッと手首から先だけが差し出されたのだ。


思わず悲鳴を上げそうになり、なんとか押しとどまった。


「俺の手を握って」


厚彦に言われ、梓はなんの疑いも持たずにその手を握り締めた……。