だけど、この体に触れることはできないのだ。


それが不思議な気分だった。


「なんだよ。そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいだろ?」


厚彦は自分の胸元まで布団を手繰り寄せて言った。


「だって珍しいんだもん。それにさ、これから先どうする気?」


「どうするって言われてもなぁ……」


梓の言葉に厚彦も困っている。


「とにかく、今の俺は広中さんから離れることは不可能だ。だから、もっと仲良くなる必要があると思う」


突然の提案に梓はポカンとしている。


「仲良くなるって言われても……」


生きている間ならそれもできただろうけれど、相手はすでに幽霊だ。


今からどうやって仲良くなればいいかわからない。


「まずはお互いに下の名前で呼ぶって言うのはどう?」


「下の名前……」