「あたしには霊感なんてないよ?」


それは決定的な言葉だった。


梓に霊感はない。


今まで幽霊が見えたことなんて1度もない。


つまり、厚彦が死人だとしたら、見えるわけがないのだ。


「そんなことを言われてもなぁ……」


厚彦が困ったように頭をかく。


「俺は確かに死んだんだ。交通事故で。たぶん、明日の朝には連絡が来ると思う」


「それ、本気で言ってるの?」


呆れ顔の梓に厚彦は真剣な表情で頷く。


冗談を言っているようには見えなくても、普段の厚彦がお調子者なので信用できない。


といっても、何度外へ放り出してみても気がつけば梓の近くに戻ってきているのだから、どうしようもなかった。


「……仕方ない。どうせ映像かなにかなんだよね?」


ふぅとため息を吐き出して梓は立ち上がる。