10年でも十分長い年月だ。


「でも、その前の先生はもっと長く顧問をしていたみたいだよ」


続いて言われた言葉に玲子の目が輝いた。


「その先生のことって、わかりますか!?」


テーブルに身を乗り出して質問する玲子に、和田先生は目を丸くしている。


「もちろんわかるよ。それにしても、今の新聞部はそこまで熱心だとは感心するねぇ」


和田先生は梓たちが新聞部だということを鵜呑みにしている。


信用してもらえて光栄なのだが、少しだけ良心が痛んだ。


「前の先生はね、もう70代になって引退されているんだよ。」


言いながら、和田先生はスマホをいじってどこかへ連絡を入れてくれているようだ。


「明日の午後なら時間があるらしいけれど、どうする?」


和田先生はそう言い、スマホ画面を見せてくれた。


そこには小池という名前の人とのやりとりが表示されている。


これがさらに昔のバスケ部顧問ということなのだろう。


梓と玲子は目を見かわせた。


乗りかかった船だ。


最後まで見届けよう。


梓はそう決めて、先生に約束を取り付けてもらうようにお願いしたのだった。