「厚彦くんはユキオさんの顔を覚えてるんだよね?」


「そうみたいだよ」


厚彦の代わりに梓が答える。


「だけど、この資料だけじゃわからないんじゃない?」


資料の中にある写真は、大会に出たときの集合写真がメインになっていた。


その写真は全部白黒で印刷されていて、この中からユキオさんを探すのは確かに大変そうだ。


「大丈夫だよ。カナさんのときもアルバムを借りることができたから」


梓はカナさんを特定したときの方法を簡単に説明した。


「そっか。昔のアルバムには個人情報が乗ってたんだっけ」


玲子は思い出したように呟く。


そのおかげで、カナさんの事件を解決に導くことができたのだ。


「これで最後かな」


気がつけば太陽は傾き始めていて、資料は最後の一冊になっていた。


それには去年の日付が書かれている。


ザッと目を通し、ユキオという名前がないことを確認した。