バイトをするのはべつに李々斗のためじゃない。
わたしが欲しいものを欲しいときに買えるようにするため。李々斗にかわいいって言われたいなんて思ってないし!
そうだよ、そう。だから今のは、たまたま口が滑ってちょっとおかしなことを言っちゃっただけ。
お金大事だもんね、社会経験だよこれは。
そう言い聞かせ、勢いよくソファを立つ。自分の発言の意味が自分でもわからなくて、すこしだけ恥ずかしくなってしまったから。
「、どうもしないよ。とにかくバイトするから。今回はりりの言うこと聞かない」
「おい楓莉」
「ばちばちに稼いで家を買うんじゃ~~~!!!!」
「いや無理だろ普通に」
「うっ」
手首を捕まれ、「一旦座んな」とソファに引き戻される。ぽすんっ、と柔らかいソファがわたしの身体を受け止めた。



