ぎゅううっと服の裾を強く握ると、李々斗は身体をすこしだけ回し、わたしの手の上に自分の手のひらを重ねた。


「楓莉、服のびる」と、いつもの落ち着いた声色でいわれ、小さく謝ってそっと手を離す。




「……楓莉のそれ、なんかヤダ。ずるいと思う」

「え、ど、どれ…」

「なんかこう…、あざといっつーか、…まあいいけど」



あざとい……、って、そんなの初めていわれた。

わたしのこといつも可愛い可愛いって持ち上げてくれるはるちゃんとフユちゃんにも言われたことないよ。



首をかしげると、「なんでもない」とはぐらかされてしまった。




「りり、あの…」

「嫌いになってないから」



わたしの言葉を遮るように李々斗が言う。


心配すんな、というように頭を優しく撫でられた。李々斗に触れられた瞬間、心臓が一斉に騒ぎ出す。



かっこいいからかな、綺麗すぎるからかな。

原因不明のドキドキに襲われるこの瞬間は、すこしだけ好きだ。