不機嫌な理由を直接聞くのはタブーだったのか、
それとも吉川くんの話そのものがタブーだったのか。
正解は分からないけれど、多分、両方だったのだと思う。
ごめんを言うのはわたしの方なのに、何に怒っているかも定かではない状態で謝られても機嫌を損ねてしまうかと思い、なにも言えなかった。
わたしに背を向ける李々斗に、心臓が握りつぶされたみたいに痛くなる。
李々斗とはずっと平和な幼なじみでいたい。
何でも言い合える関係だと思っていた。李々斗は面倒くさがりだけどなんだかんだ優しくて、かっこよくて、お兄ちゃんみたいって思ってた。
だけどそれも、わたしの思い込みだったのかもしれない。
李々斗がどう思っているかわからないけれど、わたしはただ李々斗にだけは嫌われたくないと、そんなことを思っている。
「…りり、ごめんなさい」
この「ごめん」は、ずっと隣にいたのに李々斗のこと考えていること全然わかってあげられなくてごめんね、の意味。
適当に言ってるんじゃない。
李々斗のこと、何にも知らない自分が 少しだけ悔しかったから。



