李々斗の前にアイスを差し出して「りーり」と名前を呼ぶと、視線だけがわたしに向いた。
「アイスあるよ。りりの好きなチョコのヤツ」
「……、」
「もおー…りりフキゲンなのめんどくさいよ。何に怒ってるのか知らないけど、とりあえずアイス食べて素直になったら?」
「おまえ……、」
李々斗が分かりやすく眉を顰めた。多分、「めんどくさい」って言う言葉が響いたんだと思う。
李々斗は昔からそう。
わたしの直球な言葉に弱いのだ。
「……食うからちょうだい、それ」
「楓莉ちゃんそのアイスくださいって言ってくれたらあげる」
「なんでだよ」
「欲しいものがある時はちゃんと分かるように言わないとダメなんだよりり」
「…はぁ、めんどくさ」
「言っとくけど今日のりりの方が3億倍めんどくさいから!」
李々斗の前からアイスを遠ざけてべえっと舌を出す。
舌打ちされたような気がするけれど、聞こえなかったふりをした。



