「吉川くんって意外と不真面目なんだ」
「不真面目って」
「ほら、だって頭いいし本もよく読んでるから。授業中寝てるキャラなんて思わないよ」
「はは。それ偏見だよ。俺は普通に寝るし、ゲームもするし、適当にサボりたいって思ってる」
李々斗以外と必要以上に会話をした事がなかったわたしからすれば、新しく隣の席になった男の子と仲良くなれる機会があるのは純粋に嬉しいことだった。
吉川くんは雰囲気も柔らかいし、根本的に良い人なんだと思う。苦手じゃない。
むしろすごく話しやすくて助かる。
よかった。わたし、ここの席で。
───ッガタン、
「……あー、なんだ。そこ楓莉なの」
そう思った時だった。
いつも聞いているものより気だるさ2割増の声に振り返ると、そこに居た彼───李々斗と目が合った。



