「な、なんでもないですっ」
なんだか恥ずかしくなってしまって咄嗟にそう言ってしまった。
フユちゃんは「痛いなら保健室行こうよ」と言ってくれたけれど、先生に『なんでもない』と言った手前、保健室に行ってきますとはなんとなく言いずらい。
授業は2時間連続なので、あと1時間はこの痛みと戦わないといけないけれど……仕方ない、我慢しよう。
「なにやってんのバカ」
─────…って、思ってたんだけど。
「えっ、ちょ、りり…っ!?」
「痛いんだろ。ほら、保健室行くよ」
試合に出ていたはずの李々斗が目の前にいる状況を理解しようとしている間に彼の手は背中に回っていて、直後───ふわりと、身体が浮いた。



