「ねぇ、こっち向いて楓莉」

「っむ、むりっ」

「なんで」

「は、はずかしいもん!りりの顔が近いから!」

「…今更じゃない?キスするときも近、」

「なんでそう言うこと言うかなぁ!?」





りりのバカ。

デリカシーない男はダメなんだよ。




さっきから心臓がバクバク音を立てていて、顔もずっと火照っている。



いくら明かりを落として暗い部屋だって、李々斗と近い距離で目を合わせるのは慣れないし。



だってなんか、目が。

李々斗の目が、いつもわたしを愛おしそうに見つめているから恥ずかしいんだもん。




そもそも、どうして今、わたしと李々斗が同じベッドで夜を越そうとしているのかというと。




「だいたい、楓莉が言ったんだろ。虫の子孫がいるかもしれないから今日はここで寝たいって」

「うっ…」





そう。

原因は、突如部屋に現れた虫。




課題も終わらせ、お風呂も済ませ、あとは寝るだけだ───と布団にもぐろうとしたところで、ブーン…と、何か黒い物体が目の前を過ったのである。