「……ほら、早く帰るよ」

「りり君はホントにツンデレですなぁ」

「やめて」

「耳赤いよ」

「冬だからじゃん?」



「ねえ知ってる?りりって、いつもキスする時最初に触れて、そのあと1回唇離してふって笑うんだよ」

「っ、まじで急になんの話?」

「りりのキスの話」

「まって楓莉、やめて」


「やぁだ。あれってさ、りりの癖だよね」

「さぁ」

「さぁじゃないよ!絶対そうだよ!」

「さぁ」

「笑うとき、何考えてるの?」

「楓莉の顔近いなって」

「そりゃキスする前だし───…っ、」





ふたつの影が、重なった。




「ね。やっぱ、顔近いよね」

「…っ、りりのばか」

「うん、そーかも」

「、りり」

「うん?」




「───…もう一回、」





















ホントは、触れるだけのキスをした後、真っ赤に顔を染めて李々斗の服の裾をつかんで一回、ってねだるわたしが愛おしくてかわいくて、幸せで。

それで、自然と笑みが零れ落ちてしまうから、だなんて。









(……ぜったい、教えてあげないけど)





李々斗がそんなことを思っていることは、わたしはまだ、知らない。