いーっと歯をつきだせば、李々斗は小ばかにしたように笑ってすぐに試合に戻ってしまった。
…間抜け顔って、無意識に口が開いていたとかだったら少し恥ずかしいな。気をつけなければ。
「ふーうーりー」
そんなことをおもいながら口元を両手で隠したわたしを、はるちゃんとフユちゃんがにやにやしながら名前を呼んだ。
「なあに今の!羨ましすぎる」
「ええ」
「口パクで『かわいいね』って言われてなかった?」
「いや全然ちがう…」
母音さえも違うよ…、とこころのなかで思いながら小さくため息をつく。
わたしもそう言われた方が嬉しかったのに。



