「とりあえず体温計と水持ってくるか───…ら?」
頬から手を離し、部屋を出ようと立ち上がった李々斗のスウェットの裾に、わたしは咄嗟に手を伸ばしていた。
「楓莉?」と、不思議そうに問われる。
なにしてるんだわたし……って、頭では、ちゃんとわかっていた。
李々斗はいなくなるんじゃなくて、体温計と水を取りにいってくれるだけ。
たった それだけだって、ちゃんと、わかってはいたけれど。
「……りり、やだ」
「…うん?」
「………いっちゃやだ、」
たった一瞬でも、李々斗の温度から離れたくなかった。
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