──むかえた体育の時間。




「楓莉、おつかれ」

「わたしなにもしてないんだけど…」

「や、うん。立ってるのも疲れるかと思って」

「もー…はるちゃんめちゃくちゃばかにしてるじゃん」

「おもしろかったんだもん」




女子の試合が始まる前、はるちゃんに「目標はボールに1回触ること!」なんて言われたけれど、わたしは結局一回もボールに触れることができないまま第1試合を終えた。



いや、一応ボールに追いつこうという気持ちはあったけれど、みんな勝ちたくて頑張っているので、わざわざわたしみたいな運動音痴にパスをだしたりはしないのである。


わたしとしてもそれが本望だったからいいんだけど。




合同体育の日は、2時間続きとは言え男女で交互にコートを使う事情などもふまえてトーナメント方式になっていて、

わたしが属するチームの試合は先ほど勝ち星を挙げたばかりなので、男子の試合が終わった後にもう1試合残っている。



試合が終わってすぐの時に、同じチームにいるバスケ部のナナちゃんが「楓莉ちゃんは次の試合も立ってるだけでだいじょうぶ!」と爽やかな笑顔で言ってくれたのでその言葉に甘えることに決めたのである。