「…ぬ、」

「かわいくねー」




それはその手のせいでしょうが。


自分で人の顔をつぶしておいて、さぞ間抜けな顔をしているであろうわたしを見て彼は はっと笑った。


何を笑ってるんだ、このやろう。




「飲む?」




ぱっと手を離した李々斗が麦茶を差し出した。頷いてグラスを受け取り、さっそく冷たい麦茶を身体に流し込む。


お風呂上がりの火照った身体にちょうどいい冷たさだった。




「楓莉、髪乾かせよ」



李々斗の長い指が、まだ濡れたままの髪をすくった。



「あとでやるのー」

「今やれって」

「りりがやってくれてもいいよ」

「人にお願いする態度じゃねーわそれ」

「乾かしてくれるの?」

「ドライヤーは自分で持ってきてよ」

「りょうかいっ」



彼の言葉に短く返事をして、麦茶がまだ少しだけ残るグラスをテーブルに置き、わたしは立ち上がって洗面所に向かった。