なのに、李々斗は「なかったことにしていい」って言ったんだ。
そんなのひどいよ、今更だよ。
悲しくて、寂しくて、ご飯も食べずお風呂にも入らず、部屋でひとりで泣いた。
気分転換に課題でもしようかなって、なんとなく机に向かったけれど、泣いたあとだということもあってそのまま眠りに落ちて……それで、今だ。
「……りりのこと、傷つけちゃったかもしれません」
「楓莉ちゃんが?」
こくり、小さく頷く。
李々斗は多分、勘違いをしているのだ。
勢いでキスをしてしまったことを、わたしに申し訳ないって思っている。さっきのキスが李々斗の独りよがりだって、そんなふうに思っているのだと思う。
ちがうよ、そんなこと思ってないよって、ちゃんと言わないといけなかったのに、わたしは何も言えなかった。